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男子個人総合は、前評判どおり、楊威が優勝。これまで国内の個人総合のタイトルは獲得していただけに、今回が嬉しい大きな国際大会の初優勝となった。二位にも同じ中国の梁富亮が入った。三位は地元の韓国のエース、キム・ドンファが入った。冨田は最初のあん馬で落下して、惜しくも四位。水鳥はゆかで点が伸びずに五位となった。

採点に多々疑問な点あり!
今回の個人総合は、上位選手に全くミスがなかった訳ではなかった。特に楊威とキムドンファと冨田はそれぞれ大過失を犯している。ポイントは、ミスをして何点が出たかであった。

第三ローテーション。まず、中国の楊威がゆかの第二シリーズ(二回半ひねり+前方宙返り+前方宙返り一回ひねり)で着地で後ろに行き、まず手をつき、そのままお尻も・・・というところでぎりぎり踏ん張ったのだが、個人的には確かに微妙な採点であると思われた。大過失となると減点はおろか、SVにも関わる。彼のこのシリーズは、成功すれば0.5の加点が取れるのだが、今回のように最後で大過失をしてしまうと、最後の技の価値が認められず、その分、連続技に対する加点も失うのだ。となると、彼のシリーズはE+Dの扱いが、Eのみの扱いとなり、加点は0.2のみとなる。このSVの0.3の差が大きいのだ。実際に、楊威の点で採点で長引き、かなり待たされたのだが、結局、失敗部分は価値として認められて、SV10点からの採点で、9.300となった。その他の部分でよかったとしても、果たしてどうか?実は一本目の伸身新月面も低く、この部分でも0.1だけでは収まらない減点があったように思われた。

そしてもう一つの失敗はキム・ドンファの平行棒。最後の屈身ダブルでしりもち。単純に減点して0.5なのだが、価値点の問題、そして、熟練度の問題で、0.5以上の減点となるはず。であるにも関わらず9.250が出た。本当にそういう演技だったとは到底思えない。少なくとも、価値点での減点を無くしても、通常はこの点数にはならないはずだ(9.000とかが普通見られるような点数だと思う)。

キム・ドンファに関しては、ゆかの第一シリーズもそうだった。テンポハーフ、+前方一回ひねり+前方二回ひねりという技だったのだが、ひねり不足で着地も低く、そのまま後ろに倒れたのだが、伏せたように見せてうまくごまかした。しかし、「ごまかした」といっても普通はあの捌きならば後ろバランスを崩してに手を着いたという0.3の減点対象となってもおかしくない。しかし・・・得点は9.375。そのままの勢いで、あん馬でも9.725を出して銅メダルとなったのだが、団体戦であん馬の最高点を出した北朝鮮のキム・ヒョンイル選手が今回は9.675であることを考えても、地元に点を出すように仕組まれていたと考えられてもおかしくない。見ている日本人観客の方々には納得できないものも多かった。

第一ローテーション

あん馬の最初の演技者であった冨田は、シュテクリBの連続から片ポメル上での縦旋回に入るところで、バランスが乱れたのか、ポメルのカーブ部分を持ってしまい、そのままバランスを崩して落下。決して苦手ではない種目であるが、昨年の中日カップでもあん馬は落下しており、今回も再びやってしまった形だ。エースの残念な演技の後に、塚原を追い越して個人総合に残った水鳥がつり輪で着地まで止めて何とか踏みとどまってくれた。北朝鮮のキム・ヒョンイルは得意のあん馬で9.675をマーク。そして、それを上回ったのは韓国のエースのキム・ドンファ。得意のつり輪で着地まで決める力強い演技で9.775を出した。楊威は、何でもない移行でややバランスが乱れたり、ツイスト四分の一ひねり(ビロゼルチェフ)でも足が割れたりと実施で細かいミスがあり、9.625に留まった。そして、カザフスタンのエリンベトフが平行棒で好調な演技を見せて、9.750を出して二位となった。鉄棒の最初の演技の梁は降りの月面でやや腰とりがあり、9.550に留まった。
第二ローテーション

水鳥は跳馬のカサマツ一回ひねりで着地を止めて、9.350を出す。北朝鮮のキム・ヒョンイルは力技の静止で十分ではなかったが、9.450を出して上位に留まった。キム・ドンファの跳馬はカサマツ一回ひねりであったのだが、ひねり不足気味で、9.250としてしまった。楊威の鉄棒は着地まで完璧で9.650をマーク。このローテを終えてトップに立つ。エリンベトフは価値点の問題で伸びきらず9.350。そして、つり輪の演技の冨田は、失敗の影響を見せない素晴らしい演技で着地もしっかり止めて9.650をマーク(キム・ドンファと0.1も差があるとは思えなかったが・・・)。ゆか得意の梁は9.600を出して楊威次いで二位となる。
第三ローテーション

楊威、キムドンファがゆかと平行棒でミスをして点を落とす中、冨田は跳馬でカサマツ一回ひねりをまずまずの出来で演技し、9.350をマーク。エリンベトフは、楊威の採点にかなり待たされ(写真・10分以上かも?)、第一シリーズでしりもちをついてしまう。見ていても気の毒としか思えなかった。梁はあん馬でも9.675の高得点でこのローテを終えてトップに立つ。水鳥は棒下宙返りでやや倒立の角度が甘かったように思え、9.575に留まった。

写真中央で電話で話しているのは中国の黄力平さん
第四ローテーション

キム・ドンファは昨日落下した鉄棒で失敗した閉脚エンドー一回ひねり大逆手を慎重にこなし、9.500をマーク。平行棒の冨田は着地以外は相変わらずのきれいな演技でまとめ、9.675をマーク。楊威はそんなに得意ではないあん馬を無難にまとめて9.550とした。梁は、苦手のつり輪の演技で価値点の問題もあり、8.825に留まった。水鳥はコバチ+コールマンこそ見せなかったが、技の迫力と着地がぴたりと決まって場内から大きな拍手をもらって9.350を出した(SV9.8)。キム・ヒョンイルは平行棒で足割れが見られる個所があったにも関わらず9.750を出し、冨田の点を上回った。そして、楊威をわずかに0.05差でかわしてトップに立った。
第五ローテーション

楊威がつり輪で降りをいつもの新伸身月面ではなく、伸身ダブルに変えてきた。しかし、ここでもまた採点に時間がかかった。今回は恐らく力技の静止部分であっただろう。若干不足したり、中水平も輪の高さになってなかったりと、これも加点に影響する部分で、引けばかなり点が下がるので、審判団も慎重になったのであろう。冨田選手の鉄棒と重なってトータルの構成が分からないが、それで9.650という点を出したのを見ると、SVは10点であったのであろう。冨田は着地もぴたりと決まったが、9.525に留まった。彼の鉄棒なら今回の甘い採点であるともっと出てもいいのに・・・と思ったのは一人だけではなかったはずだ。水鳥はゆかの最初のシリーズで二回半+前宙+前宙一回ひねりの予定が最後の前宙一回ひねりが行えずに価値点を下げてしまい、9.050となって順位を下げた。キム・ドンファは実施の減点が多く見られたにも関わらず、9.375を出した。梁は跳馬でカサマツ一回ひねりを無難に決めて9.475を出した。トップに立つキム・ヒョンイルは鉄棒で8.825としてしまい、順位を下げた。この時点で、二位争いが微妙で、キム・ドンファ、梁、キム・ヒョンイル、そして、冨田までが0.2差となった。
第六ローテーション

梁は平行棒で足割れこそあったものの、スピード感あふれる技の連続で着地まできれいに止めて9.750として、ほぼ二位を確定。冨田は苦手のゆかで着地をほぼ止めてきて、9.375を出して、他の選手の演技を待つ。跳馬の楊威は得意のカサマツに買いひねりで大きく一歩であったが、点差が十分あり、優勝決定。キム・ヒョンイルは第一シリーズで二回半ひねり+前宙のあと、本来は前宙一回ひねりのはずだったであろうが、前宙になってしまい、同じ技の繰り返しで減点を受け、8.875となり、メダル争いから後退。残るはキム・ドンファのあん馬となった。得意とはいえないはずの彼のあん馬であり、実際に、下向き転向移動での足割れも目立ち、少なくとも今日の選手で一番の演技とは思えなかったが9.725を出して、見事に銅メダルを獲得。・・・と思ったが、表彰式の段階で得点が訂正されていて、梁と同点の二位となった。

しかし、この結果をコーチ陣、そして選手自身がどう受け止めたかは不明だが、少なくとも、楊威とキム・ドンファのミスは果たして正しく採点されたのか、疑問に残るところである。最後のキム・ドンファの得点を見て悔しい表情を見せた冨田選手と梶山監督(写真)。この悔しさは是非種目別にぶつけてもらいたい。