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いよいよ開幕した、2002年プサンアジア大会の体操競技最初の金メダルである男子団体は中国が優勝。二位には日本を引き離し、地元韓国が入った。しかし、結果的には中国の優勝となったが、「もしかしたら韓国が金メダル」というくらい、韓国が肉薄する場面もあった。新人を起用した韓国は、その若手が十分な力を発揮したといえよう。対する日本は、塚原があん馬と鉄棒でミスをするなど、相変わらず団体戦ではイマイチ調子が出ない悪い癖が出てしまい、冨田が引っ張ったものの、得点も伸びず、三位に終わった。

写真 優勝の中国チーム。韓国に負けず劣らずの応援、そしてマスコミ陣の数で、国での関心の高さが伺えた。

それでは、各ローテ毎に内容を見ていこう。

<<第一班>>

団体はマレーシアのみで、ウズベキスタンは一人足らずに三人となった。旧ソ連のウズベキスタンの技に注目されたが、選手はジュニアの選手らしく、まだまだ荒い線で、安定性も欠けていた。その間に館内を盛り上げたのがマレーシア。先のコモンウェルスゲームズ(英連邦大会)でゆかで二位になったン・シュワイがエースで、恐らくみんな10代という若さでチームを組んできた。最初のゆかでそのンは二本目のシリーズで手を着き、8.7としてしまったが、その段階でかなり場内から注目され、ルックスも手伝って異様な声援となった。そして、跳馬ではンが非常にきれいなローチェを決め、9.4を出し、脚力の強さをアピールした。

第二班でマレーシアが演技していたら雰囲気は随分違ったであろうが、かなり盛り上がった。基本技術にはまだまだな部分もあったが、例えばあん馬のロケ選手がSVで10点であったり、ン選手は中でも比較的基本ができていて、きれいな体操を見せてくれなど、我々の予想した力以上を持っているようだ。まだ彼らが若手となると、マレーシアの成長も注目される。指導内容も気になってしまったところである。

写真 この日一日で人気急上昇のマレーシアチーム左が一番声援を受けていたオーン(OON)選手、中央がエースのン(NG)選手、右があん馬でSV10点のロケ(LOKE)選手


<<第二班>>

第一ローテーション

日本は休みで、中国がつり輪、韓国がゆかのスタートとなった。中国は世界チャンピオンの馮敬をトップにして、早くも層の厚さで違いをアピール。順当に点を出すが、それを上回ったのが北朝鮮のあん馬であった。バルセロナ五輪金メダルのぺ・ギルスを彷彿とさせるラストの選手の演技(名前はあとで確認します)など、高得点を出し、中国のつり輪の点を上回ってしまった。韓国は第一シリーズのミスが目立ち、得点が伸びず、三位となってしまった。

第二ローテーション

日本はこのローテからゆかでスタート。トップの小川がラインオーバーのスタートで、後に続く選手も着地で低くなったり、安定性に欠けるものが多く、このスタートでややつまづいてしまった感じがした。鹿島も第一シリーズで恐らくラインオーバーだったのだが、韓国の審判?が横の韓国のあん馬を見ていたのか、見逃してくれた感じだった。中国の跳馬は圧巻。楊威はカサマツ二回ひねり、李小鵬はロンダード半ひねり前転跳び前方伸身宙返り二回半ひねりをきれいに決めて、SV10点で高得点を連発。跳馬でこのように二人SV10点を揃えるのはさすがだ。韓国はあん馬でも伸びきれず、その代わり北朝鮮がつり輪でも点を伸ばし、中国を上回る。

第三ローテーション

日本のあん馬は、小川、水鳥と、ラストの降り技の寸前でバランスを崩し、見ている者をはらはらさせる実施となってしまった。しかし、冨田、鹿島と決めてくれて、鹿島は東アジアの悔しさをバネに、見事な出来で9.725を出した。塚原はウゴーニャンで落下。ここで決めてくれていたらチームとしてもう少し乗れたかな?という思いは捨てきれなかった。中国の平行棒はまたもすごかった。シドニー五輪金メダルの李小鵬は、アームモリスエの実施の質でため息を誘うと、最後の屈身二回宙返りも相変わらず開いての着地で、ぴたりと決めて9.850を出す。この段階で北朝鮮をかわし、トップに立つ。韓国も得意のつり輪で、着地までまとめる見事な演技の連発で、追い上げを見せ、去年の世界選手権の団体決勝でこの種目で怪我をしてしまったエースのキム・ドンファは前半の力技の連続でアピールして、強さを見せてくれた。

第四ローテーション

日本のつり輪はまず着地が素晴らしく、三人目までピタピタ止めてくれた。最後の冨田も決めてくれれば最高だったのだが、まずはあん馬、つり輪で北朝鮮を上回るペースになり、メダルだけは最低確保できる状態となった。中国の鉄棒は、李小鵬が「伸身トカチェフ+開脚トカチェフ+閉脚トカチェフ」といった離れ技の連続を見せてくれて、最近単発になりつつある離れ技の中で、目立つ構成であった。しかし、もともと得意でない種目なので得点も伸びきらず、跳馬でも波に乗った演技を見せた韓国に追い上げの隙を与えてしまった。

第五ローテーション

中国はこのローテは休み。跳馬の日本は、トップの鹿島が着地で手を着いてしまったものの、9.0を出してあとの選手が成功して点を伸ばしてもらいたいところだったのだが、水鳥が着地をまとめたにもかかわらず9.3にとどまり、その後も着地である程度まとめたにも関わらず点は伸びず、ラストの塚原も着地で前に大きく出て9.3を超えることはなく、二位の韓国を追い抜くには大変厳しい状態となった。韓国は、東アジアのときはSVで低い点であった平行棒だったのだが、世界チャンピオンのイ・ジュヒョンがコーチとなり、力を着けてきて、最初の二人は倒立でバランスが若干乱れたが、三人目以降、軒並み9.7以上をマークするなどこの種目で中国に肉薄する。新人のキム・ソンイルは非常に体線がきれいで、実施減点も少なく、9.80を出した。しかし、この平行棒、キム・ソンイル選手の前に点がなかなか出ず、場内もかなり間延びし、テレビのモニタも重量挙げに切り替わるくらいであった。

第六ローテーション

中国がゆかで点が伸びなければ、もしかしたら・・・という予想があったのだが、実際に中国は最初の若手三人が苦しむ結果となった。トップの馮敬、そして騰と、8点台で、「もしかしたら・・・」と思ったのだが、若手の梁、そして、楊威が素晴らしかった。楊威は得意種目であり、悪いムードを恐れぬ度胸で伸身新月面など決め、そしてラストの李小鵬も同じくノーミスで、ラストも伸身月面という強さ。この種目で逆に中国は金メダル確実とする。一方、韓国は、またもやキム・ソンイルの前で点がなかなか出ず、かなり待たされたのだが、逆に今度はそれが災いしてしまったのか、その後の演技でミスが出て、中国に追いつくチャンスを逃してしまった。このローテで韓国は全演技終了。日本は韓国に追いつくには9.6平均が必要であるという厳しい展開となった。日本は、先の韓国の点の出方からすると、9.7連発となってもおかしくない構成だったのだが、ほぼノーミスで、着地のみ動いたような演技でも9.6台に留まり、厳しい採点に泣かされた。この種目といい、跳馬といい、もしかしたら一点近く損をしているような気がした。

第七ローテーション

日本の鉄棒は、水鳥が今回は「コバチ+コールマン」をやらないような感じのアップであったのだが、最初のコバチで落下。その後、再度コバチ、そして車輪を入れて、コールマンと決めただけに、決めてくれれば種目別に進んで演技が見れたかもしれないということで残念であった。塚原も最初のシート系(ちょっと見逃してしまいました)で停滞し、バーに乗ってしまうミスで点が伸びず、完全に銀メダルは厳しくなってしまう。しかし、最後の冨田は吸い込まれるような着地でエースらしく素晴らしい演技であった。中国は、あん馬でさほど点は出なかったのだが、大きく崩れることはなく、見事な金メダルとなった。