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日本のメダルを占う国であるアメリカとロシアの登場とあって、日本からの観衆も増え、関心の高さを窺い知ることができた。観衆には今回はスペインの応援団もいて、第一班に続き熱狂的な応援が見られた。一方、アメリカは、さすがに昨年と違い他国での大会なので、熱狂的な応援は全くなく、比較的大人しい応援であった。 第一ローテ ロシアのゆかは残念ながら第一タンブリングをほとんど見逃してしまい、全体的な出来がはっきりしないが、コンビネーション部分での失敗があり、三つ目の要素が欠ける等していた。アメリカは平行棒からで、特に目立ったミスもなく、まずまずのスタート。ポール・ハムが一番しっかりとまとめてきて、棒下宙返り倒立などもしっかりと決まっていた。スペインは久々の登場となった前回の五輪チャンピオンのデフェールがユルチェンコ二回ひねりとドリッグスを決めた。両方共に膝のゆるみが気になる実施であった。 第二ローテ 何といっても北朝鮮のリ・ジョンソンに注目した。ほとんどの観衆があまり理解してなかったようだが、第一タンブリングにかかえ込み2回宙返り3回ひねりの大技を持つ。アップから注目していたが、まず単発のかかえ込み宙返りで圧倒的な高さを見せ、その後のかかえ込み新月面で感触をつかんで、最後に2回宙返り3回ひねりを見せた。それを決めて気分よく本番を迎えたが、一本目にその技を見事に決めた。第二タンブリングは2回半ひねりからのコンビネーションで、方向がややずれるのが気になった。しかし、最後に伸身新月面を決めて、完全に観衆の注目を集めた。ロシアはボンダレンコが「またも」あん馬で落下。苦しいところであったが、ネモフがその後を立て直してノーミスで通した。アメリカはウィルソンが落下したが、モーガン・ハムが伸身トカチェフだけという離れ技であったがいい出来であった。その後のポール・ハムは伸身トカチェフ〜開脚トカチェフ〜閉脚トカチェフで、ギンガーを抜いてきた。また、ラトビアのサプロネンコは一本目にローチェひねり、二本目に屈身ヨーホンチョルを見事に決め、価値点10点を二本そろえた形となった。 第三ローテ ロシアは最初のデビアトコフスキが9.662を出し、その後もそれを下回らずに続き高得点を連発。ヨーロッパ選手権つり輪チャンピオンのサフォシュキンは引き上げ十字倒立を見せるなど、高難度の技を連発して9.737を出した。アメリカはマックルアが一本目に伸身月面を見せ、三人目のガードは目立った要素はなかったが、価値点10点で減点を抑えた内容で、高得点を続けた。モーガン・ハムとポール・ハムは伸身新月面を決めて得意種目で大いに観衆にアピールした。スペインはヘスス・カルバリョが落下し、応援団から大きなため息が出た。 第四ローテ ロシアが徐々に持ち味を出してきたという感じで、跳馬は素晴らしかった。ボンダレンコがローチェひねりと屈身ヨーホンチョル、ゴロツツコフはクエルボダブルとドリッグスを決め、種目別決勝は間違いないところ。最後のサフォシュキンはつり輪だけではないといわんばかりに屈身メリサニデス(ユルチェンコダブル)を決めた。アメリカは苦手のあん馬であったが、その中にあってポイントゲッターのマックルアが落下。徐々にアメリカの雰囲気が下がってきた。スペインはデフェールが得意種目のゆかで高得点をマーク。一本目を見逃したが、最後は相変わらずの後方伸身1回半〜前方伸身〜前方伸身1回半であった。オーストラリアのリッツォは丁寧できれいな捌きで9.700を平行棒で出した。 第五ローテ リッツォは世界選手権で2001年と2002年にメダルを取った鉄棒であったが、アドラーひねりでリズムが狂い、その後構成を変えたような感じであったが倒立まで行かず停滞してしまい落下。悲願の五輪メダルは絶望的となった。ロシアは平行棒でネモフに注目されたが、棒下宙返り1回ひねりのところはまずまずだが、棒下宙返りで沿ってしまい、ややリズムが崩れていた。アメリカはつり輪となったが、意外な弱点を見た気がした。一人目のマックルアから点が伸びてなかったが、ウィルソン、ポール・ハムが力技の決めが甘く点が伸びない。静止が短いのだ。それは得意種目であるはずのガットソンにも見られた。特に中水平部分での決めが極端に悪かった。決めがないまま降ろしてしまう捌きを続け、最後のウィルソンもややそれが見られた。ロシアが高得点を続けたものとはかなりかけ離れた状態であった。スペインはカノが素晴らしかったようで、途中応援団の声援がワントーン上がっていた(残念ながら内容は見れず)。北朝鮮のリ・ジョンソンは一本目にロペス(カサマツ二回ひねり)を見せたが失敗。二本目のユルチェンコ2回半ひねりも失敗したが、脚力の強さを見せた。 第六ローテ アメリカは、跳馬でドリッグスが3人、前方伸身2回ひねりが1人、ローチェが1人で、価値点10点はゼロであった。その点を考えるとロシアの内容が如何にすごいかを感じる。アナハイムで価値点の計算ミスがあったモーガン・ハムはしっかりとドリッグスを決めていた。しかしながら、価値点が10点出ない状況では9.7や9.8は難しく、点を伸ばすまでにはいかなかった。ロシアは鉄棒でボンダレンコやグレベンコフが会場を盛り上げ、そして最後のネモフは屈身コバチ、伸身トカチェフ〜開脚トカチェフ〜閉脚トカチェフ〜ギンガー、かかえ込みコバチと観衆を熱狂的に注目させ、最後は伸身新月面であったが、アナハイムの種目別決勝のときのように前に大きく一歩出た。ネモフはからだが一段と大きくなってしまったようだが、ダイナミックかつ美しいラインはこの鉄棒に関しては健在であった。 この時点でアメリカがルーマニアを僅かに0.4差でかわしてトップに立った。明らかにアナハイムのときと雰囲気も違い、観衆の後押しもない為に、金メダルを狙うチームの状態ではないと思えた。そしてロシアが3位になった。全演技を見ていないので無理があるが、ロシアの状態はアナハイムとは違い、決勝での戦い方次第ではアメリカと並ぶ状態で、日本は決して侮れないと思えた。そしてフランスが4位に食い留まって、スペインが5位となった。 このローテも含めて、9.7や9.8が量産状態になっているかもしれない。アナハイムよりも0.1くらい全体的に甘くなった感じだ。ただし、単に甘くなったというのではなく、例えば跳馬では価値点10点が決して1人や2人という状態ではなく、ドリッグスに至っては「果たして何人やったのだ?」という状態。カサマツ1回ひねりの方が少ないような感じだ。一番感激するのはつり輪。減点をはっきりさせているようで、差がしっかりとついていた。その点平行棒で序列はOKなものの、点差があまり出てないように思えたのは残念だ。